2012年11月13日

「近現代のブックデザイン考1 書物にとっての美」展と中村不折『藝術解剖學』

今日は朝から、小川町にある武蔵野美術大学美術館・図書館へ出かけてきました。
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書物のデザインについての展示「近現代のブックデザイン考1 書物にとっての美」が今週いっぱいまで催されているからです。装幀・造本・印刷・用紙・書体などなど、拵えモノとしての本を愛好する者の端くれとしては、これは見逃せない企画展です。

開館時刻までに着くように早めに出て、大学最寄りの鉄道駅から玉川上水沿いを散策しつつ行こう、と決めたのはよいのですが、案の定予定通り(!?)計画よりも遅れて出立、店から私鉄駅まで15分ばかり突っ走る羽目に。思わずいい運動になってしまいましたが、電車の乗り継ぎはよくて思いの外早く目的地の駅に到着。この辺りの上水両岸は昔ながらの姿を維持していて、緑も多く気持ちのよい散策路になっています。
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水路にタイヤなんぞが投げ込まれていなければ、もっとよいのですが…。
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途中で片岸を塞いでいるので何ごとかと思ったら、新たに橋を架けるとかで、それに先立って遺跡調査中とのこと。こんなところに包蔵地があるのですねぇ。

…などとあちらこちら見ながら歩いていたら、いつの間にか行き過ぎてしまっていて方向転換。
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古そうな大きな農家の庭先に、欅の古木が聳え立っていました。
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土蔵や、瓦屋根に土壁の立派な建物も残されています。東京近郊でも小川町辺りは、まだまだ農村の面影を色濃く遺していますね。

さて、そんなこんなで当初予定より結局30分ばかり遅れて到着。
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予想を超える数の美しい稀覯本が部屋いっぱいに展示されていました。
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まさに垂涎ものの貴重書を、その大半が覆いもないまま極く間近で眺められるのです。これは素晴らしい。
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更には、現物を手に取ってしげしげと覧られるコーナーも。流石は美大の図書館です。
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あれもこれも興味をそそられる本でいっぱいでしたが、別の意味で気になる1冊がありました。
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それは、わたしの蔵書にもある中村不折の『藝術解剖學』という本。「こんなに地味だったっけ…」という印象を受けたのです。
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図録では単色刷りで収録されているため、本文の色の比較は出来ないのですが、何といっても、展示されていた本の表紙がほぼ黒一色の、変哲もない装幀だったのが意外だったのです。
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店に戻って引っ張り出してみるとやはり記憶通り、腕の骨格が描かれたぶら下げ看板のような意匠を金箔押しした、とてもインパクトのあるデザインでした。

図録のデータを見ると、展示品は昭和15年に出された崇文堂出版部刊のもの。
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一方、ウチにあるのは大正4年初版・同14年改訂版の中央美術社刊本でした。つまりこちらがオリジナルヴァージョンというわけですね。4枚前の写真にあるように、そこが改訂箇所なのか、一部図版は糊で貼り付けてあります。全体に紙灼けして褐変しているものの、色版も綺麗に残っています。
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それにしても、折角多くの方がご覧になる機会なのですから、こちらの版が展示出来ていたら、と思うとちょっと惜しい気がします。

惜しいといえば、製本修復師の方が今回の企画展のために上製本3種の組み立て構造を、実際の本の材料を使って立体的に示した解りやすい模型が3点展示してあったのですが、それが図録に収録されていないこと。
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解体中の古い本の写真が載せられているのはよかったのですが…。

それと、辞書好きとして目を惹かれた、本文の組版が美しい辞典が展示されていたのですが、それが収録されていないのも残念です。てっきり載っているものと思っていたので、その表題が思い出せず…がっかり。

ともあれ、こんな展示が無料で拝見できるのは実に有り難いことです。企画展タイトルに「1」とついているからには、次もきっとあるに違いありません。今度はどんなものを見せていただけるのか、今から楽しみです。
posted by くろねこ at 23:24 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日誌?
この記事へのコメント(店主承認後に表示されます)
おお、中央美術社版は、そんな美しい本だったのですね!
ひと通り見終わってから図録を購求し、帰路であれが無いこれが無いと気づいたガッカリ感ときたら…。実に同感です。
2012年11月14日07時44分 ウチダアキラ 記す
>ウチダアキラさん
大正期〜昭和一桁辺りは頓に、美しい装幀の本がたくさん出ているようですので、考えようによっては同企画展シリーズでも「ブックデザイン探求の愉しみがまだまだある」とも云えますね。

図録に収録されていないものがあるのは致し方ないことですが、でも今回のこれはかなり魅力的に出来ていますよ。内容も多色刷りページが多く、文章もまどろっこしくなく、またモノとしてもハードカヴァーではない分軽いですし、つるつるした紙ではないので手に馴染みます。

ムサビ美術館・図書館、素晴らしい施設ですが行くのに結構時間を喰うので、残り期間からして今期中の再訪は無理ですね〜。ちょっと残念。
2012年11月14日10時04分 くろねこ@店主代理 記す
図録の「軽さ」については、誠文堂新光社『アイデア』354号「日本オルタナ出版史1923-1945ほんとうに美しい本」と持ち比べると恐ろしく違うわけで、この造りは「持ち帰り用」として嬉しいものでした。
今回の展示が「ブックデザイン考T」だということは当然「U」以降も既に企画されているのでしょうから、「探求の愉しみがまだまだある」ところ、期待大でありますね。
2012年11月14日22時40分 ウチダアキラ 記す
>ウチダアキラさん
『アイデア』仰せの号は未見ですが、大概は長時間持ち歩くと肩が凝るようなものが多いだけに、今回帰りがけに電車内で立って読んでおりましたが楽でした。
ムサビ美術館の過去の企画展で通し番号のついたものがひとつあったように思いますが、確か4か5かまで続いていたので、また行くことになろうかと思っているところです。
そういえば、今朝ほど貴ブログなど拝見しましたが、今回おいでになったのですね。
他の記事もなかなか興味深いですが、其穎については全く存じませんで、架蔵の杉原子幸 編『日本書畫人名辭書』(松山堂 刊 明治44年4月7版)を早速繙いてみましたがやはり出て来ませんでした。現役当時は識られていても、歿後はあっという間に消える方も少なくはないので…。
2012年11月14日23時09分 くろねこ@店主代理 記す
久永についてお調べいただき、ありがとうございます。
2012年11月16日18時15分 ウチダアキラ 記す
>ウチダアキラさん
いえいえ、お役に立ちませんで。
2012年11月16日18時37分 くろねこ@店主代理 記す
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