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「棚板は何枚いるのか」問題@大日本レトロ図版研Q所さんのモノ日記
https://muuseo.com/lab-4-retroimage.jp/diaries/29
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にも話が出たように、マイクロライブラリ「レトロ図版博物館」の工事が一向に始まらないので、その暇に「折角会員制にするのだから、なにか継続的なおたのしみ企画があってもいいかな」と考えていたのですが、「日本のレトロ図版普及を兼ねて、著作権保護の切れているものを素材にオリジナルゴム印を拵えて月イチくらいで頒布する」というのはどうだろう、と思いつきました。

市販のデザインゴムスタンプというと、どうも甘ったるいファンシーなものが多く、また日本のデザインによるものとなると、妙に伝統柄寄りの、いわゆる「和風」ものばかりが目立ちます。もっとかっちりした「理科趣味」のものや洒落た飾り罫の類いなどは海外の製品とか、国内モノでも雑貨作家さま作品など、探せばないことはありません。……が、それの元になっている図版は恐らく、どれもインターネット公開されていたり素材集として市販されていたりする、著作権の切れた西洋の出版物から採られたものとおもわれます。
少なくとも、「日本の古い本などから図版を拾い出して作ったゴム印」というのは、商品としては今までどなたも拵えられたことがないのではないかしらん。
架蔵資料の中でも、企業の商品カタログ類は団体名義の出版物ですから、昭和初期以前に出されたものならばどれでも問題なく素材として使える筈です。

☝かなりの冊数がある、さまざまな分野の図版研カタログコレクション。同じく今は図版研でシェアリングされている教科書コレクションや辞書コレクションなどもそうですが、元々は ねこの隠れ処 で古道具をインターネット通販のために出品する際、その解説を書くための資料として蒐めていたものでした。
ということで手始めに明治〜大正初期のカタログを何冊か引っ張り出してきて、以前から拵えてみたいとおもっていたレトロ図版ゴム印をこのほど試作してみたのです。

図版をディジタルカメラで撮影し、コンピュータに取り込んで画像調整の上、パス描き出ししたものを入稿。

フツーは「如何に鮮明に捺せるか」というところを意識して作られるものを、逆に意図して粗い仕上がりにすることで「レトロ図版」感の再現を狙おう、というのですから、お請け負いいただいた業者の方も最初は少々戸惑っておられるようでした(笑)。結果的にちゃんとこなしてくださるのが、流石はプロフェッショナル。
顔料スタンプインクでクラフト紙に捺してみたところ。

元図版の印刷ムラやかすれなどもある程度再現できていて、なかなかよい感じではないかと。
ただし鋳造ゴム印は、やはり活版のようには精度がでないので、元データを拵えるときにはどれくらいの細かさならば再現できるかを把握しておく必要があります。ということでその「限界」に挑戦してみた、一番単価が廉いサイズで作った「本」スタンプ☟

銅版画のような、細い線を並べた蔭の表現はそれなりに出ていますが、材質の特性でどうしても線が原画よりもやや太ってできあがるため、隙間が潰れ勝ちになります。開いた本のノド側の部分はもんやりしてしまっていて、どうもイマイチの感じ。つまり、このようなイラストレーションならばもっと大きめに作る必要がある、ということになります。
少し前までは、台木は桂材などの天然木製でしたが、今は「中質繊維板(Medium Density Fibre Board: MDF)」と呼ばれる、木屑を接着剤で纏めて成形した板が主流になりつつあるのですね。

押捺見本がついている持ち手側の仕上がり具合はこんな感じ。

雑貨作家を目指す積もりはありませんので、月に一度くらいの間隔で会員の皆さまに図案をお示ししてご希望者を募り、お代+送料を前金で頂戴して発注、多分半月くらいで発送できるのではないかとおもいます。発注数が増えれば単価が下がるので、よりお得☆ ということで、会員の方が仕入れとしてお申し込みくださって、ご自身の商品として販売なさるのもアリでしょう。10本未満の端数は切り上げて注文する考えですから、余った数本はご希望をお出しになり損ねた方にお頒けできるかとおもいます。
ただしどうせ量産はしないのですから、同じものは在庫がなくなっても再発せず、そのコレクション性をおたのしみいただこうという考えです。ご希望者が5名に達しない、とかご注文数が一桁、とかの不人気のものは発注せずにボツにしてしまえばよいのですから、こちらとしても懐ダメージの憂いなく、お気楽に企画できるという寸法です☆
こういうようなイヴェントを定期的にしていけば、地方にお住まいでなかなかご来館いただけない会員さまにも、なにがしかのお埋め合わせができるのでは、という考慮もあっての思いつきなのでした。